なぜ手漉きの紙を使い、自分で糊をつくるのか?

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唐招提寺団扇大和表装
 掛け軸や巻物等は作品に紙を貼り装丁してあります。工房で使用する裏打ちの紙等はすべて人が漉いた手漉き紙を使用しています。楮紙(ちょし)こうぞの紙は岐阜県美濃市産で、原材料の楮は栃木の那須産です。繊維が細く、綺麗で強い楮です。
増裏紙の美栖紙、総裏紙に使用する宇陀紙は奈良県吉野産です。どちらも日本で1軒か2軒が漉いています。パルプが入っている紙は使用していません。一概には言えませんがパルプ混ざりの紙は酸化し劣化が早く、シミが出るといわれます。そのような紙で裏打ちや修理をすると、その紙をが劣化し剥がすだけの繊維の力が残っていず、いざ修理をするときには粉々となり、作品から剥がすことが出来ません。作品の修理が出来ないということになります。
 使用している手漉き紙は貴重ですが、柔らかさ・保存性・安定性に優れており、文化財の修理には欠かせない材料です。再修理できる技術と材料を使用して修理を行います。
 接着のための糊はタンパク質を取り除いた小麦粉(沈生麩)を自分の工房で煮て作ります。効率は悪いですがシミや変色の原因となる防腐剤の薬品を使用しないためです。作品に対して悪影響のない、また将来の再修理時には剥がすことが出来る糊を作るためです。化学的な糊は良く着きますが剥がすことができません。再修理が出来ない、あるいは極めて困難な修理となり、作品を劣化、脆弱化させることになってしまいます。



宮田文申堂概要 修理実績

概要 昭和57年に渋谷の國学院大学を卒業し、京都にある表具師へ入門しました。京都国立博物館の修理所に入っていた工房です。11年間の修行を終え故郷の五日市に帰り宮田文申堂工房を開きました。文申堂の文は文化、文学あるいはことわりという意味で、申は師匠の堂号の一字を頂き文申堂とつけました。修行中に文化庁文化財修理技術者講習会を終了し、平成18年に国宝修理装こう師連盟の主任技師資格を取得しました。平成15〜18年まで大東文化大学にて文化財修理に関する非常勤講師をしました。

修理実績 千葉県指定佐倉高等学校鹿山文庫「模理損字書」冊子装 川崎市重要歴史記念物薬師院所蔵紙本着色盤珪永琢図掛幅装 埼玉県指定重要文化財養竹院達磨図信方筆額装
東京都指定文化財極楽寺所蔵桑都日記冊子装 埼玉県立文書館打毀一件諸書物留冊子装
国立歴史民俗博物館所蔵舟橋清原家文書 ハワイ大学所蔵琉球人登城行列之図巻子装 な
埼玉県息障寺や浄林寺の釈迦涅槃図・當麻曼荼羅図・両界曼荼羅図など。およそ平安時代から近代までの作品、地図・掛け軸・巻物・書籍・屏風・額など絵画・文書などの資料の修理、装丁の新調をしています。



(文化財)修理 切り取るのはきれいにすること?新しく色を着けて良いの?

修理が終わり、装丁が整うときれいになります。それは汚れた部分の絵や紙などを取り除いたということではありません。汚損があるものは、清浄な水を使い、絵や文書に負担のないように除去はします。しかし紙を痛める薬品を文申堂では使用しません。薬品が残留し後世にシミや紙の劣化、変色を招くと考えているからです。悪い影響のリスクが少しでもあるようなら使用しないほうが良いと考えます。絵や文書をなるたけ良い状態で後世へ伝えていく事を第一に考えています。欠失や破れているところを直し、破損の進まないように装丁を新調します。また欠けた部分や穴が開いた部分には、線や色で描き直しません。それをするとその作品はオリジナルではなくなってしまうからです。

住所 あきる野市 小中野 550 - 8
地図
TEL 0425950781
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駐車場 1台 
交通アクセス
JR武蔵五日市駅より徒歩15分 五日市郷土館向かい
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